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フランスの世界遺産アルルのローマ遺跡とロマネスク様式建造物群

フランスの観光地の中でも日本人にも人気の高いプロヴァンスにある世界遺産です。古代の歴史と中世ロマネスクの荘厳な建物が連なり、独特の雰囲気が漂っています。この地を散策すれば、古代ローマ時代の遺跡たちが、話しかけてくるような錯覚を覚えます。

 

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「アルルのローマ遺跡とロマネスク様式建造物群」とは?


フランス南部プロヴァンス・アルプ・コートダジュール地方に位置するアルルは、「ガリアの小ローマ」と呼ばれており、植民地の中でも重要な役割を果たしていました。現在も、街の至る所に往時を偲ばせる遺跡が残っています。円形闘技場など古代ローマ時代の遺跡が7件と、ロマネスク期の教会が1件の全8件が世界遺産に登録されています。

 

『アルルのローマ遺跡とロマネスク様式建造物群』は、1981年に世界文化遺産として登録されています。

 

登録基準は、文化遺産(ⅱ) (ⅳ)です。

 

また、一部は、「フランスのサンティアゴ・デ・コンポステーラの巡礼路」と重複しています。

 

アクセス

パリ・リヨン駅から直通のTGVで約4時間です。また、マルセイユからはTERで約50分。

 

「アルルのローマ遺跡とロマネスク様式建造物群」の歴史


アルルは、紀元前6世紀にギリシャ人によって創設されました。その後、ケルト人が占領しています。紀元前1世紀のユリウス・カエサルが、ローマの植民地としました。カエサルといえば「ブルータス、お前もか」という、引用句で有名な人物です。

 


でも、植民地といっても悪いことばかりでなく、都市が建設され商工業が急速に発展しアルルは繁栄しています。この時代には、円形闘技場や古代劇場が作られました。このころのアルルは海が近かったこともあり、主要な港としても使われています。

 

アルルの繁栄がピークを迎えたのは、4~5世紀ごろです。ローマ皇帝の軍事遠征の際に本部になり街は発展。皇帝コンスタンティヌス1世のお気に入りの地となったことで、ローマ浴場が建設されました。

408年のコンスタンティヌス3世は、アルルをガリア地域の首都としています。このことで、街は文化と宗教の中心とされ、ガリア地域をキリスト教へ改宗する重要拠点となりました。

 

「アルルのローマ遺跡とロマネスク様式建造物群」のみどころ

円形闘技場


この世界遺産最大のみどころは、楕円形の円形闘技場でしょう。フランスで最も規模が大きく、保存状態が良好とされる遺跡です。75年ごろのカエサルの次の皇帝アウグストゥスの時代に建設されており、2層建てで60のアーチから構成されています。説によると、元々は3層だったようです。

 


最も広い場所で直径約136m、収容人数は2万5,000人も動員できるほど巨大なものです。キリスト教へ改宗されたことにより闘技が禁止となり、要塞や住居として使われました。1825年に修復され再び闘技場として使用されています。現在も、春の「復活闘牛祭」など、さまざまなイベントで利用されています。

 

また、入口の塔の上から望む眺望は必見です。闘技場内はもちろん、アルルの町や遠方にはアルピーユ山脈を見渡せます。

 

古代劇場


半円形の階段式の座席から舞台を見下ろすように造られた古代劇場。紀元前27~25年ごろに建てられたといわれています。5世紀には教会建設のため、一部の石材が切り出されました。その後要塞として利用された後、地中に埋没しています。この遺跡の上には民家が立っていたそうです。

 

17世紀になって発見され、55年もの歳月をかけて発掘されました。現在残るのは、数本の大理石の柱のみですが、現在もコンサートやオペラなどが行われています。17世紀の発掘時に見つかった「アルルのヴィーナス」は、ルーブル博物館に収蔵されています。

 

地下回廊とフォルム


アルルの地下にはローマ時代に造られた地下回廊があります。ヴォールトを持つ地下回廊は、公共広場の土台となっていました。馬蹄型をした地下回廊は、紀元前1年には既に存在しており、アルルで最も古い遺跡といわれています。地下回廊だけあり、ひんやりと冷たい空気が漂っています。暑い日には散歩道として、腐りやすい食料品の保存庫としても使われていたようです。

 

コンスタンティヌスの公衆浴場


4世紀に造られた公衆浴場で、19世紀に発見されました。ローマ帝国コンスタンティヌス1世が、アルルに逗留していた時に建設されています。床下暖房やサウナ部屋などの跡が残っており、体操場や水風呂、プールまであったようです。このころから、床暖房があったことは、驚愕の事実ですね。

 

ローマの城壁

かつて城壁で囲まれていた、アルル市内の2ヶ所に現存する城壁です。城壁は、古代劇場建設のために、一部が使われました。2つの城壁にはそれぞれに門があり、古代に造られたトドゥート門は円形闘技場や古代劇場近くにあります。アルル駅方面にあるガヴァルリ門を備えた城壁は、中期以降に造られています。

 

サン・トロフィーム教会


リパブリック広場の一画にある、唯一中世の雰囲気を漂わせている教会です。この教会は、「フランスのサンティアゴ・デ・コンポステーラの巡礼路」上にあり、かつては多くの巡礼者が訪れました。

 


ロマネスク様式の傑作といわれており、見た目は簡素ですが、入口上部のタンパンや柱が並ぶ回廊の精緻な彫刻は素晴らしいものです。特に回廊の柱には、聖書のエピソードや植物が彫られています。

 


また、内部には15世紀に、ゴシックの内陣が作られました。この教会はかつて、司教座のある聖堂で、残念ながら1801年に小教区の教会に格下げされています。

 

その他


他にも、ローマ時代の大墓地「アリスカン」や2世紀の石畳と腰掛がある「小集会場」も、世界遺産に登録されています。

 

まとめ

古代ローマ時代の遺跡が一番多く残るアルルは、プロヴァンス地方最大の都市として栄華を誇りました。現在も街を歩けば、2000年の悠久の歴史を感じられます。

 

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