日本

2021年の世界文化遺産に登録決定!北海道・北東北の縄文遺跡群

ユネスコ第44回世界遺産委員会は、2021年7月26日の「奄美・沖縄」の世界自然遺産に続いて、翌27日に「北海道・北東北の縄文遺跡群」を世界文化遺産に決定しました。これは、日本の世界遺産で25番目、文化遺産では20番目の登録となります。今回は、「北海道・北東北の縄文遺跡群」をご紹介しましょう。

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登録までの歩み

2日続けての世界遺産への登録には、興奮された方も多いのでは?私もその一人です。
今回登録された「北海道・北東北の縄文遺跡群」は、縄文時代という日本史上でも謎多き時代の古代遺跡たちです。縄文時代は、約1万5000年前にあったとされており、巷では長年邪馬台国や卑弥呼について未だに熱い論争が繰り広げられています。

北海道・北東北といえば、世界自然遺産の「白神山地」や「知床」があり、豊かな自然に恵まれた地としても有名ですね。 「北海道・北東北の縄文遺跡群」は、北海道で6つ、青森県で8つ、岩手県で1つ、秋田県で2つの計17の遺跡で構成されています。どの遺産も、現代人の心の闇を払拭してくれるような、豊かな自然に包まれた平和的な雰囲気に包まれています。

世界遺産登録への挑戦は、2005年に青森県から始まっています。翌年には「青森県の縄文遺跡群」が、「文化審議会文化財分科会」において継続審議となりました。2007年の第11回北海道・北東北知事サミットで共同提案について正式合意がなされ、青森を始め北海道や岩手、秋田の4道県で文化遺産登録を目指したのです。

北海道森町の鷲ノ木遺跡や青森県八戸市の長七谷地貝塚は、途中で遺産から外れ、2016年に17の構成遺産が決定します。1国1推薦となったために、2018年に政府の推薦候補の一つになるも落選。この年は、「奄美・沖縄」に決定しました。2019年に推薦候補に選ばれ、2020年に推薦書がユネスコに提出されユネスコの諮問機関イコモス(国際記念物遺跡会議)の現地調査を受け記載適当との勧告がなされて、今回やっと念願の世界遺産登録の決定となったのです。

登録への主な理由は、「人類史上まれな農耕以前の定住社会豊かな精神文化が育まれていたことの物証であること」及び「長期間にわたり継続した採集・漁労・狩猟を基盤とした定住社会の変遷を網羅していること」です。

登録基準は、(ⅲ)(ⅴ)です。

因みに、日本の世界遺産の中で、発掘された考古遺跡が登録されたのは初めてです。

道県別登録遺産の紹介

氷河期が終わり東日本でも落葉広葉樹林が広く分布し、農耕や牧畜が始まる前から定住生活して大きな集落ができたのです。これはこれまでの定説を覆す、世界でも類を見ないとか。構成遺産として選ばれた18自治体による17の遺跡を、道県別にリストアップします。多岐にわたる遺跡からは、自然資源を上手く利用した、独特な文化の形成を垣間見られます。

北海道

(函館市HPより)
https://www.city.hakodate.hokkaido.jp/docs/2020013000093/
大船遺跡(函館市:中期の集落跡)
垣ノ島遺跡(函館市:中期の集落跡)
キウス周堤墓群(千歳市:後期の集団墓地)
北黄金貝塚(伊達市:前期~中期の貝塚)
入江貝塚(洞爺湖町:前期~後期の貝塚)
高砂貝塚 (洞爺湖町:後期~晩期の貝塚)

青森県


三内丸山遺跡(青森市:前期~中期の集落跡)
小牧野遺跡(青森市:後期の環状列石)
大森勝山遺跡(弘前市:晩期の環状列石)
大平山元遺跡(外ヶ浜町:草創期の集落跡)
田小屋野貝塚(つがる市:前期~中期の貝塚)
亀ヶ岡石器時代遺跡(つがる市:晩期の低湿地)
二ツ森貝塚(七戸町:前期~中期の貝塚)
是川石器時代遺跡(八戸市:前期~晩期の集落跡・低湿地)

秋田県


大湯環状列石(鹿角市:後期の環状列石)
伊勢堂岱遺跡(北秋田市:後期の環状列石)

岩手県


御所野遺跡(一戸町:中期の集落跡)

関連資産

鷲ノ木遺跡(北海道森町:後期の環状列石)
長七谷地貝塚(青森県八戸市:早期の貝塚)

「北海道・北東北の縄文遺跡群」の見どころ


(函館市HPより)
https://www.city.hakodate.hokkaido.jp/docs/2017122200063/
「北海道・北東北の縄文遺跡群」は、日本で定住時代が始まった縄文遺跡の、「津軽海峡文化圏」における暮らしぶりを示す「集落跡,貝塚,低湿地遺跡」や、精神文化の発展を表す「環状列石,周堤墓」で構成されています。ここでは、そんな遺跡たちの、主な見どころをご紹介しましょう。

三内丸山遺跡

三内丸山遺跡は、約1700年も定住生活が続いき500人もの人が暮らしたといわれる大規模な集落跡です。長さ約32m幅約10mもあるとされる、日本最大規模の竪穴住居跡があることでも有名です。既に家の中で火を使った場所も発見されており、暖房や照明の役目を果たしていたと考えられています。

この住居跡の向かいにある大型堀立柱建物も有名で、直径約2m、深さ約2mある巨大な穴が列状に6つあり、そこに六本柱が正確に4.2mの間隔で備わっていました。この建物は、祭壇もしくは物見櫓だったとされています。展示物の中には日本最大級の仮状土偶や、既に交易があった証明とされる翡翠なども展示されています。
アクセス:JR青森駅より市営バスやシャトルバスで約30~40分

大湯環状列石

ストーンサークル状に並んでいるのが特徴の、縄文時代後期遺跡です。米代川の支流の標高180mの台地にあり、野中堂環状列石、万座環状列石の2つのストーンサークルを柱として建てられていたようです。

米代川の石を使って作られた環状列石を取り囲むように、堀立柱建物、貯蔵穴、土坑墓などが同心円状に配置されています。興味深いところは、日時計状組石と呼ばれる、それぞれの環状列石の中心に有る石が、1直線に並ぶ配置となっていること。更に、直線状は夏至の日没方向にも、合わせて造られたと考えられています。
ボランティアのガイドさんもいらっしゃるので、ぜひじっくりこの地の歴史を学ぶ観光をしてみてはいかがでしょう。
アクセス:JR花輪線鹿角花輪駅から車で約25分

キウス周堤墓群

北海道中央部の千歳市石狩低地帯にある、縄文時代後期の周堤墓群です。かつてあった共同祭祀場と共同墓地が発達したもので、歴史的な価値があるとされています。墓穴の周囲に土手上にドーナツ型の盛土を施した堤のある、9基の「周堤墓」が有名で最も大きなお墓は直径が83mもあります。
アクセス:JR千歳線千歳駅から、車で約15分

まとめ


日本の古代遺跡が単独で世界遺産に登録されるという快挙を成し遂げた、「北海道・北東北の縄文遺跡群」。これだけでも凄いことですが、農耕や牧畜をする前に定住生活が始まった独特の文化があり、世界的にも価値の高い遺産となっています。神秘のヴェールを纏った、津軽海峡文化圏の縄文文化に触れてみてはいかがでしょう。

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