イタリア

イタリアの世界遺産!ティヴォリのエステ家別荘

ローマからティブルティーナ街道を抜けるとローマ帝国時代から保養地として栄華を極めたティヴォリの町に到着します。今回ご紹介する、イタリアの世界遺産は、ティヴォリの町で花開いた後期ルネサンス文化の美の結晶「ティヴォリのエステ家別荘」です。息をのむほどに美しい別荘は、この地で隠居生活を送らざるを得なかった枢機卿の意地から生まれた芸術作品です。

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ティヴォリのエステ家別荘とは

ローマの東約30kmにあるティヴォリは、ディブルティーニ山の西斜面に広がる人口約5万6000人のコムーネです。この小さな町は、中世のレンガ造りの家並みが今も残り、美しい街並みを形成しています。かつて、古代ローマ皇帝ハドリアヌス帝をはじめ、貴族たちがこぞって別荘を建てた上流階級の保養地でした。
ローマ教皇争いに敗れて1550年9月に隠居生活を送ることになった、エステ家の枢機卿イッポーリト2世・デステが、もともと建っていた慎ましいベネディクト派の修道院を別荘に改築しました。考古学の知識もあるピーロ・リゴーリオに、4.5haにも及ぶ敷地に自分の意地と権力を見せつけるかの如く、とても豪華な別荘にするよう設計を依頼しました。これが「ティヴォリのエステ家別荘」です。イタリア一美しいと賞賛される噴水庭園をもつ別荘は、今では世界遺産となっています。
16世紀におけるイタリアの庭園芸術の代表となりヨーロッパの庭園設計の発展に大きく貢献した「ティヴォリのエステ家別荘」は、2001年に世界遺産に登録されました。登録基準は、文化遺産(ⅰ)(ⅱ)(ⅲ)(ⅳ)(ⅵ)です。

 

ティヴォリのエステ家別荘の歴史


建設にあたって斜面をならし、アニエーネ川から地下水道を引き込む工事が行われました。その後、その水を用いた噴水がたくさん作られたのです。1565年に本格的な建築工事が始まり、別荘の内部には後期マニエリスムの巨匠リヴィオ・アグレスティやタッデオ・ツッカリ兄弟によってフレスコ画が描かれました。1572年に依頼主のイッポーリトは未完成のまま亡くなります。同年、ティヴォリは神聖ローマ帝国のカール5世とコロンナ家の支持者による奪略にあい、攻撃の中で多くの芸術品が破壊されたようです。

イッポーリトの死後は甥に受け継がれ、1605年以降はアレッサンドロ・デステなどの所有者によって次々と大規模改修が行われています。しかし、18世紀に入ると放棄され、見るも無残な姿になりました。1920~1930年には修復運動が起こったものの、1944年には爆撃による被害を受けています。

 

ここは美術館?大小のアーティスティックな噴水

緑の木陰と美しい水音が奏でる癒しの庭園には、苔むした大小500以上にも及ぶ噴水が点在しています。今でも、苔や美しい彫刻群、水音が清々しい庭園となっており、心の底からの癒しと中世貴族たちの優雅な別荘での暮らしぶりを体感させてくれます。数ある噴水の中でも必見なのは、噴水史上の革命と絶賛されたオルガンの噴水をはじめ、百の噴水の小道や楕円の噴水、ロメッタの噴水、ドラゴンの噴水でしょう。

百の噴水の小道では、動物の彫刻から水が流れ出す苔むした噴水がかわいらしく、愉快な散策を楽しめます。この先にあるダイナミックかつ優雅な水の競演が魅力の「楕円の噴水」や小道の反対側にある古代ローマの町並みをギュッと詰め込んだような「ロメッタの噴水」も見る価値ありです。「オルガンの噴水」は、当時としては画期的な水の力を利用してパイプオルガンを演奏するというものです。現在も2時間おきに演奏され、壮麗に吹き上がる噴水をイメージした『エステ荘の噴水』など、この庭をモチーフに作られた3曲を奏でています。

贅を尽くした別荘内にある、フレスコ画に覆われた部屋もお見逃しなく!また、バルコニーからは、美しい噴水庭園を一望することもできます。

 

最後に

丘の上に位置するティヴォリの、さらに高台にある別荘からの風景は圧巻です。青空に映える噴水の芸術性は言葉を失うほどですが、夏の夜にはライトアップされ、幻想的な美しさを魅せてくれます。

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