コルドバ歴史地区は、イスラム文化が栄え「学問都市」としての栄華を誇った風格漂う古都です。イスラム時代の遺構を残すと共に、可愛らしい花々が白壁を彩る、可憐な街並みが広がっています。今回は、スペインの世界遺産「コルドバ歴史地区」をご紹介します。
「コルドバ歴史地区」とは?
1000年も昔にこのコルドバの地で、イスラム文化が花開きました。8世紀中ごろのコルドバは、ヨーロッパ随一の都市にまで発展していたのです。最盛期の10世紀には300のモスクと50もの図書館が立っており、人口100万人の都市にまで成長しました。
1236年には、カスティーリャ王国のフェルナンド3世がコルドバを奪還し、イスラムとユダヤ教徒たちは北アフリカへと去りました。キリスト教徒となるも「素晴らしいモスクを壊すのはもったいない」と、そのままイスラムの馬蹄型のアーチと八角形のメッカの方向を示すくぼみのミフラーブなどを残し聖堂として使われました。
コルドバの後、1492年にグラナダが陥落したことにより、レコンキスタ(国土回復運動)が終焉しています。
10~15世紀には、メスキータ(モスク)の北側には、中世のユダヤ人街があります。迷路のような石畳の小道が入り組み、白壁に花々が飾られた住居が並ぶアンダルシアらしい風景が広がっています。
華美な美しさはないものの、古今東西の文化が融合するコルドバは、街全体がまるで歴史博物館のよう。「西方の真珠」と称された歴史を持つ古都「コルドバ歴史地区」の魅力を存分に感じてください。
『コルドバ歴史地区』は、1984年にメスキータが世界遺産として登録され、1994年にアルカサルやユダヤ人街がある旧市街が加わり拡張されました。
登録基準は、文化遺産(ⅰ)(ⅱ)(ⅲ)(ⅳ)です。
アクセス
マドリッドから高速列車のAVEにのりコルドバ駅まで約1時間42分。駅から歴史地区までは、徒歩で約20分。
コルドバ歴史地区の魅力
総面積2万3400㎡のモスクをはじめ、歴史地区は歴史遺産の宝庫となっています。
・メスキータ
歴史地区観光のメインは、西洋と東洋文化が融合したメスキータ(モスク)です。イスラム美を集結させたメスキータは、独自の文化を生み出したコルドバの集大成ともいうべきスポットです。
785年のキリスト教の聖堂があった場所に建てられています。その後は、コルドバの歴史と共に、さまざまな宗教に支配されながら増改築が繰り返され、この巨大なモスクが完成しました。このモスクの大きさは、メッカのカーバ寺院に次ぐ世界で2番目の規模です。
免罪の門
外壁には、唐草模様や幾何学模様などイスラムを象徴する装飾が、随所に施されています。現存する最古の門「サン・エステバン門」やアーチの装飾が見事な「サン・ミゲル門」、キリスト教建築の装飾も見られる「免罪の門」、この3つの門は必見。また、免罪の門の横に聳えるミナレットは、16世紀の後半から17世紀に造られたものです。
円柱の森
薄暗く神秘的な空間に、856本の円柱があり、赤煉瓦と白い石を組み合わせた馬蹄型の二重アーチが林立する、イスラム建築の最高峰とされる空間。人口の増加と共に、200年にわたって拡張されました。入口が一番古い円柱です。
マクスラとミフラーブ
ミフラーブは、聖地メッカの場所を示す目印で、イスラム教徒はこの方向に向かって祈りを捧げます。コーランの一節が刻まれており、金色のモザイクが施され精緻な細工も見事です。
ミフラーブのある空間を意味するマスクラは、「宗教の垣根を超えた美しい空間」と賞賛されています。
中央祭壇
(バロックの巨匠バロミーロの絵画がある祭壇飾り)
レコンキスタ完了後に改装された場所で、ゴシック様式の楕円形のドームとなっています。
主祭壇の飾りには、地元産の紅大理石が使われています。キリスト教のカテドラルに作り直すよう命令をくだしたカルロス5世は、「世界のどこにでもある建物を造るために、世の中に二つとないお宝を壊してしまった」と、嘆いたという逸話が残っています。
(聖歌隊席)
モスクの中にカテドラルが作られているのは世界でも唯一のもの。
また、後ろにある、マヨール礼拝堂も、天井部分から差し込む光が美しく装飾も見事です。
・アルカサル
1328年にアルフォソン11世によって改修された宮殿。ローマ時代のモザイク画や大理石の棺などが展示されています。航海する前のコロンブスが、ここでカトリック両王に謁見したことでも有名です。
アルカサルは、広大な敷地に広がる、イスラムの影響を受けた庭園の美しさでも知られています。
・旧ユダヤ人街
メスキータから北西にある、花々が飾られた白壁の家並みが続く美しい旧ユダヤ人街。10~15世紀にユダヤ人たちが居住していた場所です。14世紀に建立された、アンダルシア地方唯一のシナゴーグ(ユダヤ教会)は必見です。特に繊細な装飾が施されたアーチや壁の石膏模様などからは、キリスト時代に関わらずイスラム芸術の影響があったことを垣間見ることができます。
また、この町のメインは、「花の小道」。やっと一人が通れる道が20m続いており、白壁の建物を花々が彩る風景は、まさに中世のユダヤ人街を彷彿とさせています。
・カラオラの塔
コルドバ歴史地区の眺望を見るなら、グアダルキビール川にかかるローマ時代の遺構の一つ「ローマ橋」の袂に立つ「カラオラの塔」。ムデハル調の要塞で、現在は、アル・アンダルス博物館となっています。コルドバ市民の生活を再現したジオラマとメスキータの復元模型は必見です。
ローマ橋からのメスキータのフォトジェニックな景色もいいですが、カラオラの塔の屋上からの旧市街の絶景は素晴らしいですよ♪また、夜のライトアップされた景色も、幻想的。
一足伸ばして訪れたい「ヴィアナ宮殿」
世界遺産には組み込まれていませんが、14世紀にヴィアナ侯爵の邸宅として建てられた宮殿。現在は博物館となっており、銀細工や陶磁器など、豪華なコレクションが展示されています。
また、可愛らしい12のパティオが備わっており、それぞれにテーマが異なりインスタ映えの空間となっています。ゴルドバで有名な5月に行われる「パティオ祭り」では、何度も受賞歴のある宮殿なので、花の咲く時期にはおすすめのスポットです。
まとめ
いかがでしたでしょうか?イスラム勢力の当時の繁栄ぶりを垣間見ると共に、ここで花開いた一大文化の素晴らしさに触れることができます。世界でもイスラムとキリスト、ユダヤ文化が混在したスポットは、そうそうないと思います。ぜひ、それぞれの良さを見比べながら、ゆっくり観光してみてくださいね。
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