イタリア

イタリア王国初の王家の繁栄を今に語る「サヴォイア王家の王宮群」

イタリア第4の都市「トリノ」は、イタリア統一後に初めて首都が置かれた場所です。サヴォイア王家のもとでバロックが華開き、その権力をみせつけるかの如く多くの建物が建てられました。今回は、イタリアの世界遺産「サヴォイア王家の王宮群」をご紹介します。

 

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「サヴォイア王家の王宮群」とは

トリノは、16世紀にイタリア王国初の首都に選ばれた地です。トリノ周辺地域では、1861年に実現したイタリアの人々の夢「リソルジメント(イタリア統一運動)」の中心となりました。イタリア王国初の王家となった「サヴォイア家」は、トリノとその周辺にたくさんの建物を建てており、その繁栄ぶりをみることができます。現在も、トリノにある8つの王宮など、周辺を含め22もの歴史的建造物が世界遺産に登録されています。

 

『サヴォイア王家の王宮群』は、1997年に世界遺産として登録されました。
登録基準は、文化遺産(ⅰ)(ⅱ)(ⅳ)(ⅴ)です。

 

アクセス

ミラノ中央駅からトリノのターミナル駅ポルタ・ヌオーヴァ駅まで、特急列車FRECCIAROSSAで約50分。

 

歴史的背景

フランス名門貴族のサヴォイア家は、11世紀ごろフランスとスイスの国境地帯のサヴォワ地方を治める辺境伯爵家でした。力のあったサヴォイア家は13~15世紀にイタリア地方に
領土を広げ、支配力を示すために数多くの建物を建てたのです。

 

18世紀の最も著名な建築家と称されたユヴァッラなど、実力派の建築家や芸術家たちの芸術作品ともいえる建造物は、当時の最新技術を駆使して建てられています。サヴォイア王家の経済力はもちろん強大な権力をみることができます。

 

サヴォイア公国の首都が移された、16世紀半ばからトリノに王宮など邸宅群の建設が始まりました。イタリア統一後の17~18世紀には、初の王で「建国の父」と呼ばれる、ヴィットーリオ・エマヌエレ2世の命により建設された、4階建ての建物が立ち並ぶバロック様式の街並みが完成しています。

 

サヴォイア王家の主な住居

王宮及びその庭園

1646年に着工し、1660年に完成した、サヴォイア家の夏の別荘として建てられた壮大な白亜の王宮です。この王宮はヴェルサイユをモチーフに作られました。その後、あらゆる年代にわたり増改築が繰り返されています。先ほどお話しした名建築家のユヴァッラも後年に大改築をしています。フレスコ画やスタッコで装飾された「ディアナの間」や、ユヴァッラの傑作で「光の劇場」と称される大理石と光の共演が魅力の「大広間」も必見です。

 

宮殿前にはフランス風の広大な庭園があり、バラ園や果実園、ゴンドラが浮かぶ池など、散策をしながら栄華を満喫するのに最適な場所です。この庭園はヴェルサイユ宮殿の庭を造った「アンドレ・ル・ノートル」が、17世紀末に手掛けたもの。夏の夜には「栄光の中庭」にある、鹿の噴水がライトアップされます。その光と水が織りなす、美しい競演はみる価値があります。

 

ストゥピニージ宮殿

18世紀初期にユヴァッラによって建設された、聳えるように立つ豪壮な宮殿です。宮殿背後に広がる森での狩りのために建てられたものですが、フランス風でエレガントな風貌も素晴らしく、建物の上にはちゃんと鹿の彫刻が造られています。

 

内部は現在美術館となっており、豪華なサヴォイア家の栄華を感じることができます。貴族たちの狩猟風景やギリシャ神話を題材にした絵が描かれている部屋や、マルゲリータ王妃婚姻の時に作られた豪華なガラスのシャンデリアが備わった部屋などみどころも豊富です。60万坪もの広大な庭園も有しています。

 

スペルガ聖堂

1706年に丘の上に建てられた、ユヴァッラの大傑作と呼ばれる聖堂です。ストゥピニージ宮殿と共にバロック様式の傑作とされています。トリノっ子たちの散策の場となっている聖堂周辺からは、トリノ市街を一望できます。

 

建設のきっかけは、トリノの戦いでスペインとフランスに囲まれた際、「マリアのための聖堂を建てるので勝たせてくれ」と願い、本当に夢が叶い勝利しました。その約束を守るために、美しいマリア像を祀って建てたのがこの聖堂です。

 

1731年以降に亡くなった、サヴォイア歴代王の墓所が地下に造られています。螺旋状の階段を上れば高さ75mのクーポラに上がることができ、トリノ市街やアルプスの山々の絶景をみられます。

 


マダマ宮殿

他にもピアモンテの美術品を展示するマダマ宮殿や1564年にエマヌエーレ・フィリベルトの避暑地として購入されたヴァレンティーノ城、14世紀からサヴォイア家の城で贅沢な設えの館として有名なリヴォリ城など、魅力的な建物がまだまだたくさんあります。

 

「サヴォイア王家の王宮群」に行ったら食べたいグルメ

細長い乾いたパンで、トリノ名物の「グリッシーニ」は必食です。イタリア初の王「ヴィットーリオ・エマヌエレ2世」は、小さいころ体が弱く、彼のためにサヴォイア家のお抱え医師の考案により造られたもの。ナポレオンも好んで食べた棒状のパンで、「ナポレオンの小杖」との別名が造られています。
日本でも製品化されているお菓子の要素も兼ねたパンですが、一本一本手作りされたサヴォイア家ゆかりの「グリッシーニ」を、本場トリノで味わってみてはいかがでしょう。

 

まとめ

首都がフィレンツェに移されるまでのたった3年でしたが、イタリア王国初の首都となったトリノで、サヴォイア王家の繁栄ぶりと強固な権力や、今に伝える世界遺産を巡ってみませんか?サヴォイア王家が残した素晴らしい建造物をみれば、イタリアが統一へ向けて動いた躍動の歴史的背景も体感できるかも。

 

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