モン・サン・ミシェルは、満潮時の海に浮かんだような神秘的な姿が印象的な、フランスの世界遺産です。「西洋の驚異」と称されるほど美しい修道院は、さまざまな歴史ドラマの舞台となりました。年間250万人が訪れる大人気の世界遺産、「モン・サン・ミシェルとその湾」をご紹介します。
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モン・サン・ミシェルとは
カトリックの巡礼地の一つとされる「モン・サン・ミシェル」は、周囲900mの花崗岩の上に佇む修道院です。神秘的で崇高な姿を見に、昔から多くの人々が訪れています。それとは裏腹に戦火を耐え抜いた壮絶な歴史の波にももまれていたのです。「巡礼前には遺書を残していけ」との言い伝えがあるほどの難所で、干満の差が激しく大波に襲われ命を落とす巡礼者も多かったとか。
昼間は、人気観光地だけあり大混雑しますが、魅力に満ちた夕暮れのモン・サン・ミシェルを見たいなら、島内にあるホテルに1泊するのもおすすめです。日が暮れてゆくと共にライトアップされる幻想的な修道院を見ることができます。せっかくなら、朝日の頃の神秘的な修道院までゆっくり堪能したいものです。
モン・サン・ミシェルは、1979年に世界遺産に登録されました。2007年には周辺の湾など緩衝地域が加わり範囲変更されています。登録基準は、文化遺産(ⅰ)(ⅲ)(ⅵ)です。また、「フランスのサンティアゴ・デ・コンポステーラの巡礼路」の一部としても世界遺産に登録されています。
さまざまな歴史を背負ったモン・サン・ミシェル
708年に司教オーベルの枕元に大天使ミカエルが立ち、「岩山に聖堂を建てよ」と告げました。司教は、「モン・トンブ」と呼ばれるケルト人の聖地に、礼拝堂を建てたのです。当時陸続きで森の中にあったこの地が、津波に襲われ一夜にして山と陸が切り離され孤島と化します。その後驚くことに人気の聖地となり、次々に巡礼者が訪れたとの不思議な伝説が残っています。これが、モン・サン・ミシェルの起源です。
966年には、ベネディクト派の修道院が設立されました。増改築を繰り返し、完成したのは16世紀に入ってからです。修道院は、ぐるりと城壁に囲まれています。これは、13世紀以降に本格的な城塞として使われていた証です。百年戦争(1337~1453年)では、イングランドが北フランス領を浸食する中で、最後まで抵抗しました。フランスは要塞や城壁、塔を築いており、要塞のような部分が造られたのはこの頃です。現在もイギリス軍が置き去りにした大砲とその弾が残っています。16世紀の宗教戦争では、新教徒軍の攻撃から守りました。
かの有名な18世紀末のフランス革命では、反革命派の監獄として利用されており、修道院は廃止。復活したのは、ヴィクトリア・ユゴーがナポレオン3世に訴えミサが行われるようになった、1865年のことです。
モン・サン・ミシェルのみどころ
木組みの家々や塔、城壁や石畳の趣のある路地など、散策すると中世にタイムスリップしたような雰囲気を味わえます。修道院を見学していると、簡素だった建物は時代と共に、ロマネスク建築やゴシック様式などさまざまな様式を組み入れながら、増改築された経緯を見ることができます。
部屋を複雑に積み重ねた修道院の内部は、まるで迷路のようになっており、低層階には宿泊施設と庭園、施しを分ける部屋があります。中層階には礼拝堂と騎士や賓客用の部屋が。最上階には修道士たちの生活スペースがあり、祈りの場も作られています。特に必見なのは、聖堂の回廊。13世紀のノルマンディー派の象徴とされる葡萄やバラの装飾があしらわれています。モン・サン・ミシェルでは、現在も数名の修道士がここに住み信仰を守り続けています。
まとめ
モン・サン・ミシェルのご当地グルメといえば、羊の肉を使ったオムレツです。かつて貴重だった卵を使う、疲れた巡礼者のためへの最高のおもてなしだったとか。ちょっとお高いですが、観光の思い出作りにぜひ味わってみてくださいね。
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