ドイツ

ロマンティック街道の終点にある美しい教会!ヴィースの巡礼教会

オーストリアとの国境近くアルプスの麓の小高い丘の上にぽつんと佇む、素朴だけど愛着がある巡礼教会。でも一歩中に入ると、ドイツ・ロココ調(後期バロック)の最高峰と称される優美な宗教空間が広がっています。南ドイツの田舎に立つ教会が、なぜ世界遺産に選ばれたのでしょう。今回は、ロマンティック街道の終点にある「ヴィースの巡礼教会」をご紹介します。

スポンサードリンク

「ヴィースの巡礼教会」の建立にまつわる伝説

ドイツバイエルン州南部のヴィースの草原にあるキリスト教教会です。この「牧草の教会(ヴィース=牧草)」には、世界各国から祈りを捧げに多くの人が訪れています。「奇跡の教会」とも称されており、建立にまつわる不思議な伝説が残っています。

ヴィース近郊にあったシュタインガーデンの修道院で、1730年に修道士が聖金曜日の聖体行列のために「鞭うたれるキリスト」の木像を作りました。しかし、血にまみれ鎖に繋がれたキリストの姿があまりにもグロテスクで、人目につくところに祀ることができず、屋根裏に放置されていました。

1738年に信仰が厚く修道院で熱心に祈りを捧げる農家の夫人「マリア・ロリー」が、3月4日にこの木像をもらい受け、数ヶ月たった6月14日に木像が涙を流したという伝説が残されています。これが「ヴィースの涙の奇跡」として、たちまち広まりました。一目「鞭うたれるキリスト」の木像を一目見たいと、たくさんの巡礼者たちが農家に訪れるようになったのです。

1740年になって牧草地に、木像を祀るための小さな礼拝堂が建てられました。でも、噂が噂を呼び、巡礼に訪れる人は増える一方。小さな礼拝堂では事足りません。巡礼に訪れる人をはじめ一般の人々の寄付が募られるようになり、「ヴィースの巡礼教会」が建てられました。

伝説はどうであれ、ロココ様式の最高傑作のひとつとされる教会が、ロマンティック街道の終点に建てられたことは間違いありません。1745年に南ドイツの名建築家「ドミニクス・ツィンマーマン」によって改築が開始されました。1754年に建物部分が完成し、3年後の1757年に内部の装飾もでき上がりました。

因みに、内部のフレスコ画を担当したのは、ツィンマーマンの兄で宮廷画家の「ヨハン・バプティスト・ツィンマーマン」です。弟のドミニクスは教会の完成後も、側に家を建て教会を眺めながら晩年を過ごしました。

『ヴィースの巡礼教会』は、人類の創造的才能と文化的伝統の証拠で認められ、1983年に世界文化遺産として登録。2011年には範囲変更されています。
登録基準は、文化遺産 (ⅰ) (ⅲ)です。

アクセス

フュッセンから72、73番バスで、Wieskirche,Steingadenまで約45分。

「ヴィースの巡礼教会」のみどころ

牧歌的な美しさの外観と裏腹に、教会内部はヨーロッパで最も美しいロココ教会と謳われるほどの華麗な装飾に圧倒されます。優美で流れるような曲線を多用し、花や貝殻のデザインを盛り込んだ美しい空間となっています。それでは、「ヴィースの巡礼教会」のみどころをご紹介しましょう。

奇跡を起こしたキリスト像

先ほど触れました伝説の寄木造りの「鞭うたれるキリスト」の像は、教会の中央にある主祭壇に祀られています。キリスト像の上には、アルプレヒト作「人となり給うたキリスト」が描かれており、祭壇最上部の高挙された子羊はキリストを表しているとか。

また、主祭壇の左にある、説教壇のイルカに乗った少年と天使たちの装飾も必見です。

深遠な神学がテーマといわれる壮麗なフレスコ画

教会内に入ってまず目をひくのが、装飾と見事に調和したフレスコ画です。ドームに見えるよう目の錯覚を利用したフレスコの天井画は、平面の天井に天界を描いたもの。よく見ると、虹の上に座る復活したキリストや天国への鍵を持つ聖ペテロ、槍を持つ大天使ミカエルも描かれています。入口の近くにある茶色の扉は天国への入口です。フレスコ画はもちろんですが、絵の周りを飾る装飾も見事ですよ!

金・赤・青と漆喰に彩色を施した柱飾り

存在感のある、色鮮やかな大理石の柱も見物ですが、身廊を取り囲む金をふんだんに使った柱飾りも見逃せません。細やかに作られた装飾には、目を奪われること間違いなし!

もちろん、パイプオルガンも、華美に装飾されています。

教会は現在人気の観光地となっています。周辺には、売店やレストランがあります。カストホーフ・シュヴァイガーというお店で売られる、ヴィース名物の揚げパン「ヴィースキュヒャー」は必食です。シナモンシュガーの素朴な甘さはたまらないおいしさとか。

まとめ

バロック様式を継承する内部の、淡い色彩が美しく軽快で優美な室内装飾が魅力の小さな教会に訪れてみませんか?きっとその美しさに、感動すること間違いありません。

スポンサードリンク