インドネシア

バリ島初の世界遺産「バリ州の文化的景観:スバック・システム」

インドネシアのバリ州には、伝統的な水利システムが生んだ文化的景観があります。アジアリゾートとしてのイメージの強いバリ島ですが、「神々の住む島」と称されるバリ島の伝統が育んだ文化的景観も素晴らしいものです。今回は、インドネシアの世界遺産「バリ州の文化的景観」をご紹介します。

 

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「バリ州の文化的景観:トリ・ヒタ・カラナの哲学を表現したスバック・システム」とは?

インドネシアバリ島の内陸部の広大な地に渡り、水が育んだ5つのスポットが世界遺産に登録されました。水を神と崇めるバリ・ヒンドゥー教を信仰する人々の思いが作りだし、それを現在も受け継ぐ営みは、それぞれに素晴らしい文化的景観を作り出しています。

『バリ州の文化的景観:トリ・ヒタ・カラナの哲学を表現したスバック・システム』は、2012年に世界文化遺産として登録されました。

登録基準は、文化遺産(ⅱ) (ⅲ) (ⅴ) (ⅵ)です。

 

アクセス

デンパサール国際空港(イ・グスティ・ングラ・ライ国際空港)からバトゥール山・バトゥール湖までレンタカーで約2時間。

 

トリ・ヒタ・カラナとは?

「トリ・ヒタ・カラナ」とは、神と人間の自然の調和を示す、バリ・ヒンドゥー教の考えを指す言葉です。

サンスクリット語で、「トリ=3」、「ヒタ=安全・繁栄・喜び」、「カラナ=理由」という意味を表しています。これは、神がもたらす恵みから、お供え物を作り、祈りと共に捧げる(神がもたらす自然を人間が受け取り、神に捧げる)という、人間自然の三者の関係を表しています。

 

スバックとは?

スバックを簡単にいうと、バリ島を覆う水利システムのことです。
貯水槽に水を貯め、水路によって水を均等に配るシステムです。

 

元々2期作が一般的で、3期作まで行う田んぼもあります。同時期に、田植えと刈り取りが行われないことも、アジア有数の米の産地となった理由です。米が良く取れるようになったのには、画期的な水利システムを造ったことが大きく影響しています。

田の給水と排水を上手く使い分け、田んぼを多く作ったのです。しかも水利システムは、9世紀に始まり、11世紀には既に存在していたことが確認されています。14世紀には組織化されており、一つの河川に複数のスバックを管理する役人まで据えていました。かつては、起伏の激しい地を縫うように手掘りで作られており、その距離は延べにして190kmにもなるとか。

 

5つのバリ州の文化的景観

5つの文化的景観は、降った雨が山から川へと流れ、清らかな湧水となって田を潤します。また、人々は水で体を清め、寺院では清めた体で実った供え物を捧げます。そして、海に流れその水は再び天に帰っていきます。

このような自然の摂理の恵みを、世界遺産の5ヶ所でみることができます。それでは、みていきましょう。

 

ジャティルウィの棚田

「神様の階段」と称されるライステラス(棚田)を、みることができます。「ジャティルウィ=本当に素晴らしい」という意味です。緑の美しい景色をみていると心の底からの癒しを体感できます。

ここは、バトゥール山保護地区スパックの景観を代表する、インスタ映えのスポットです。できれば朝夕の、涼しい時間に訪れるのがおすすめで、バトゥール山の雄大な景色とのコラボはインスタ映え間違いなしです。

道も整備されているので、田園散歩を十分に楽しめます。ビリーズ・テラス・カフェで、絶景を眺めながらランチを楽しむのも◎。短いコースで45分。棚田の中にある神秘的な水寺院「ブシ・カルン寺院」までいくロングコースは、1時間半~2時間が散策の目安です。

 

パクリサン河川流域

世界遺産のティルタ・エンプルという水寺院で、聖なる水で沐浴し心身を浄化するバリ旅を楽しめます。ここには、バリ最古のスバック景観が残っているのも魅力です。

沐浴の仕方は、更衣室で着替え沐浴場にある祀にお供え物をして、一番左の木浴場に入水します。次にパンチョランという水の吹き出し口の前で、手を合わせてお祈りをします。その後、手を合わせたまま頭から水を浴びます。左から順に浴びていき、最後から3番目と2番目は浴びません。右の池では3つ目まで浴びます。更衣室で正装に着替え供え物を準備し奥の寺院で祈りを捧げます。

 

濡れた体をふくタオルと着替えはお忘れなく!満月と新月は、効果も倍増するといわれているので、かなり混み合います。

 

バトゥール湖

バリ随一の風光明媚な景勝地とされる「キンタマーニ高原」にある、火山湖です。別名「バリの水がめ」と呼ばれています。水源地となっており、ここから各地の田園に水を供給しています。

16世紀ごろから、巨人クボ・イオが水源となる深い井戸を掘ったのがこの湖の始まりという伝説も生まれています。夏でも涼しいので、羽織るものはお忘れなく。また、バトゥール湖は、「女神の住む湖」と称されています。湖畔にある、トヤ・ブンカ村に、湖を見渡す絶景温泉があります。温泉に浸かり、生命の源とされる聖なる湖を眺める至福のひとときを。

 

タマン・アユン寺院

バリに数多くあるスピリチュアルスポットの一つで、縁結びのスポットとして有名です。観光客は内部には入れませんが、散策路を歩きながらメル(塔)が一番よく見えるところでお祈りするだけでも効果があるといわれています。

タマン・アユンとは「美しい庭園」という意味を持っています。寺院の周りの芝生も綺麗に手入れされ、インスタ映えの美しい寺院をみることができます。水路に沿った散策路を歩いているだけで、外界と区別された聖なる空気を感じることができます。

 

ウルン・ダヌ・バトゥール寺院

バトゥール村のほぼ真ん中にある、バトゥール山大噴火の歴史を伝える巨大な寺院です。水の神様を祀った寺院で、バトゥール湖の守護神デウィ・ウルン・ダヌが祀られています。

バトゥール山が噴火した1917年には、バトゥール湖の北東端にありました。噴火した時に流出した溶岩流がこの寺院の手前でピタッと止まった奇跡が伝えられています。1926年の噴火のときは被害にあってしまい、今の場所に移築されています。そのとき、村も二度と被害に遭わないようにと、外輪山上の寺院と同じ場所に新しく村を作りました。

 

まとめ

残念ながら、都市化が進むデンパサールやクタなどの都市へ、若者たちの移住が進んでいます。伝統的なスパック体系が守られてきましたが、少しずつ変化しており、この美しい景観が失われつつあり崩壊が危惧されています。

バリ島はリゾートとして有名ですが、水の恵みが作りだした、世界文化遺産でフルパワーチャージをする観光もおすすめです。

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