キューバ

文豪ヘミングウェイが愛した街「ハバナ旧市街とその要塞群」

メキシコ湾にのぞむキューバ島の北西にあるハバナ旧市街には、かつて行政の中心地となり、スペインの植民地時代には総督府がおかれました。キューバ島を発見したコロンブスは、「この世で最も美しい島」と賞賛したとか。今回は歴史に翻弄された美しい、キューバの世界遺産「ハバナ旧市街と要塞群」をご紹介します。

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「ハバナ旧市街と要塞群」とは

「カリブ海の真珠」と称されるキューバ島は、1492年にやってきたコロンブスが一目見て島の美しさに感動したという逸話が残っています。16世紀にこの地を征服したスペイン人によって建てられた、コロニアルの建物が集中しています。

その美しい景観が人々を魅了する首都ハバナの旧市街と、すぐ東にあるハバナ湾を頻繁に訪れる海賊や諸外国による攻撃から守るために立てられた4つの堅固な要塞が世界遺産になりました。142.5ヘクタールの世界遺産内を散策すれば、要塞都市としての機能を備えなければならなかった、ハバナの複雑な歴史を垣間見ることができます。

世界遺産の「ハバナ旧市街と要塞群」には、アメリカ合衆国が誇る小説家が、29歳の時から何度も訪れ、スペイン内戦後に住み着いています。彼の名はヘミングウェイといい、この地をこよなく愛していました。彼の代表作として知られる『老人と海』や『誰がために鐘は鳴る』などの名作が、ハバナで誕生しています。残念ながら、1959年にアメリカとの関係の悪化により、キューバ革命が起こりました。アメリカ人だったヘミングウェイは、帰国せざるを得ず二度と訪れることはありませんでした。農園と邸宅は、政府に寄贈されています。

『ハバナ旧市街と要塞群』は、1982年に世界文化遺産として登録されました。登録基準は文化遺産(ⅳ)(ⅴ)です。

アクセス

ホセ・マルティ国際空港から、旧市街地までタクシーで約40分。

「ハバナ旧市街と要塞群」の見どころ

ハバナの歴史は、1519年にスペイン人のベラスケスが建設に着手したことから始まりました。17~18世紀に建てられたバロック様式や新古典主義の建物や、アメリカから新しく入ったモダニズム・アールデコなどが細い道沿いに立ち並んでおり、3000にも及ぶ建物が密集しています。

また、かつてのハバナ港はスペイン船で賑わっており、砂糖や葉巻などのハバナの名産品を積み世界へ運び出していました。17世紀には造船の中心地としての役割も果たしています。次々に建てられた多くの要塞の内、現在4つの要塞が残っています。

フランスの海賊「ジャック・ド・ソーレス」による焼き討ちから、新たな要塞が建設されたという、悲劇から立ち直る強いハバナの歴史も垣間見ることができます。

旧国会議事堂

1929年に建設された、アメリカ支配時代に建てられた旧国会議事堂。4階建ての白い建物は高さ98m、幅208mあり、円形の柱廊の上部はドームとなっているのが印象的です。ファサードの銅製の扉に描かれている、30枚のキューバの歴史を描いた浮彫は見る価値があります。

ガルシア・ロルカ劇場

1837年建造のスペイン・バロック様式の建物で、詩人のガルシア・ロルカの名前を冠とした壮麗な劇場です。キューバ・クラシックバレーの本拠地として知られており、国際バレエ・フェスティバルの会場としても使われています。特に正面の装飾の美しさは目を見張るほど美しく、夜にはライトアップされた幻想的な姿は見る価値ありです。

革命博物館

ハバナの中心に堂々と聳える博物館です。アーチの回廊に囲まれたコロニアル様式の建物は、1920年に大統領官邸として建設されており壮麗かつ重厚感があります。キューバ革命後は革命博物館となり、内部ではチェ・ゲバラの写真や、革命当時の映像、カストロがゲバラに宛てた手紙など、現在は革命のお宝が展示されています。

野外には、カストロが使用した戦車をはじめ、戦闘機やゲバラやカストロがメキシコからキューバに来た時に使ったヨット「グランマ号」も展示されています。

バロック大聖堂

クリストファー・コロンブスの遺体が安置されていた大聖堂で、正式名称は「サン・クリストバル大聖堂」です。17世紀の石畳時期のカテドラル広場に堂々と立っており、旧市街のムードメーカー的な存在となっています。

1555年に創建されましたが、1704年にキューバ・バロック建築の傑作と称される建物に再建され1776年に完成しています。波打つようなファサードや高さの違う正面の2つの鐘楼が印象的です。右側の鐘楼には、7トンもの重さの鐘が吊るされています。

アンボス・ムンドスとヘミングウェイ邸

旧市街にあるアンボス・ムンドスは、ヘミングウェイが定宿にしていたホテルです。泊まっていた511号室は一般公開されており、原稿やタイプライター、釣り道具などが展示されています。ルーフトップバーからの、眺望も素晴らしいようなので、時間が合う方はぜひ。

このホテルで書いた『誰がために鐘は鳴る』の印税で建てた、ハバナ郊外のヘミングウェイ邸も訪れるべきスポットです。現在は博物館となっており、ヘミングウェイが実際に使用していたタイプライターやセンスの良い生活風景などを見学できます。お茶目な落書きもあるようですよ。庭にある愛艇ピラール号も、お見逃しなく!

ここから近いコヒマルの海岸で出会った漁師の話から書かれた、『老人と海』はこの邸宅で執筆されました。2冊の小説を読んでから訪れれば、この地の魅力を最大限に感じられるかも。

4つの要塞

フエルサ要塞

フエルサ要塞は、1558年にバルトロメウ・サンチェスにより建設されたハバナ湾両岸で初の要塞です。完成当初は木造でしたが、フランス海賊の焼き討ちに合い、サンゴ石を用いた強固な要塞へと再建されました。

モロ要塞

1589年に建設されモロ要塞は、ハバナ湾の入り口を防御する役割を担っており、カリブ海最強の要塞といわれています。高さ20mもの城壁に囲まれており、この城壁のお陰でイギリス海賊「フランシス・ドレーク」の攻撃を退けることができたようです。

プンタ要塞

1590年に建てられたプンタ要塞は、モロ要塞の対岸にあり船が航行できないよう太い鉄の鎖で繋がれています。現在一部は博物館として公開されています。この要塞からのインスタ映えの絶景は、モロ要塞と共に人気となっています。

カバーニャ要塞

手薄だったハバナ湾の東側の陸からの侵入を防衛するために、カストロ3世の命により1763年から約10年かけて建てられたカバーニャ要塞。1762年に陸路からイギリス軍に占領されたのが、この要塞が作られた理由です。海に向かって備わった大砲は、毎晩21時に打たれており、150年以上も続く伝統儀式となっています。

まとめ


町を歩けば、キューバ革命を成功に導いた英雄チェ・ゲバラの関連グッズや、1960年代のアメリカのクラシックカーが数多く走っています。キューバの首都ハバナで、ここで起った歴史を感じたり、ヘミングウェイの足跡を追ったりしながら観光するのも楽しい、見どころ満載の世界遺産です。

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